演目のあらすじ(な行)

「鵺」(ぬえ)四・五番目物

所・摂津国蘆屋ノ里

前シテ・舟人、後シテ・鵺の霊、ワキ・旅僧、アイ・所ノ者
 
三熊野参詣した僧が、上洛の途中攝津国蘆屋里で一夜を明かしていると埋木のような舟に乗ったいかにもあやしい異様な姿の者がやってくる。僧がその名を尋ねると「近衛院の時代に源頼政に射殺された鵺の亡霊です」と答えます。鵺とは、昔近衛院の御寝所に夜な夜な現れた妖怪。近衛院は丑の刻になると何故かひどく怯える。東三条の森より黒雲がやってきて紫宸殿を覆うと必ず怯える。そして警護の為に源頼政が召し出される。頼政は妖しき妖怪の出現を待つ。そして黒雲の中にいる妖しき姿に向って矢を放つ。矢は見事に当たり妖怪は空より落ちる。そこへ頼政の家来・猪の早太が駆け寄り散々に刺し殺す。鵺の亡霊はその有様を僧に語ります。そして、回向を頼み再び舟に乗って闇夜へと消えていった
旅僧が、読経していると鵺の霊が本体となって現れ再び自分の最期の様を語る。鵺は、自分は天罰で射殺されたと自分の罪を認める。鵺を退治した頼政は、恩賞に剣を賜った。そして自分はうつほ舟に押し込められて淀川に流されこの蘆屋の地に流れ着き成仏できない身となってしまった。今は冥途の闇の中にいる。そんな自分に仏の力で光をあてて欲しいと僧に回向を頼み海中へと消えていく。
鵺とは、頭は猿・足手は虎・尾は蛇の形をした妖怪。鵺を退治した源頼政は平治の乱で唯一平家方につき三位の位まで昇ります。のち以仁王と共に平家に反旗を翻し敗れ、宇治の平等院で自刃します。

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